太陽最終話 雨の音は遥か遠くで

波の音が響いている…―。

アイス屋さんを目指して歩いていると、額に一粒、雫が落ちてきた。

〇〇「あ……雨」

降りはじめた雨は急激に強さを増して、私達は顔を見合わせる。

アピス「……自分が嫌になるな」

アピスさんが、持ってくれていた私の傘を開きながらつぶやく。

アピス「完璧なデートにしたかったのに……」

〇〇「そんな! 雨の海も、すごく素敵です」

ほんとうに、そう思った。

雨が傘を叩く音が、波の音に混じっていく。

アピス「……そう」

アピスさんは、そう言ったきり、顔を背けてしまった。

〇〇「アイス屋さんって、有名なところなんですか?」

アピス「……そう。本当は、アイスはテラスで食べる予定だったんだ」

〇〇「え?」

アピス「景色がいいって、有名だから」

(あ……もしかして、“デートプラン”……?)

アピス「その後は、星の形の砂でできた砂浜に行って、そこから船に乗って……」

アピさんは、ブツブツとつぶやいている。

(そんなに考えてくれてたんだ)

胸がいっぱいになって、私は何故だか笑いだしてしまった。

すると…-。

アピス「……笑うなよ」

ムッとした表情を浮かべて、アピスさんが私を睨む。

〇〇「ごめんなさい。違うんです……嬉しくて。 だって、そんなに考えてくれているって思わなかったから」

アピス「べ、別に僕は……」

〇〇「また、晴れた日にも、連れて来てくれますか?」

アピス「……気が向いたらね」

彼は、頬を染めている。

なんだか拗ねたようなその様子が可愛くて、私はもう一度頬を綻ばせた。

〇〇「あ! あそこ見てください。雲間から海に光が射して、綺麗ですよ」

アピス「……ふーん」

〇〇「それに、雨の音も、とっても…―」

続く言葉は、風に攫われてしまった。

彼が私の首の後ろを引き寄せ、唇をキスで塞いでいる…-。

〇〇「……っ」

しばらくして、やっと呼吸を許された。

アピス「今日は、おしゃべりだね」

私の頬を撫で、アピスさんがふっと微笑む。

アピス「雨の音が、何?」

雨の音は、もう聞こえない。

ただ、耳の奥で、潮騒のような自分の鼓動が聞こえていた…-。

<<太陽5話||太陽SS>>