第3話 静かな植物園

手を繋いで、私達は園内へと入った…-。

園内は少し蒸し暑く、たくさんの人で賑わっていた。

サキア「驚いたー……人いっぱいだ……」

サキアも圧倒されたように立ち止まり、辺りを見回している。

サキア「皆……こんなに植物に、興味があったんだね」

○○「毒薬の国っていうぐらいだから、みんな薬草や植物に興味があるのかと思ってたけど……」

サキア「うーん、仕事してる人は……興味あると思うけど……。 でも……たぶん一部の人だけ……だよ」

サキアの声が、少し小さくなる。

○○「……そうなんだ」

サキア「人いっぱい……少し苦手。 でも、僕は植物が見たいから平気……○○は……嫌、じゃない?」

サキアの言葉に、私は…-。

○○「私は大丈夫。でも……」

サキア「でも……?」

○○「植物の方は、驚いてるかもしれないね」

サキアは私の言葉に、少し面食らっているようだった。

サキア「植物が……驚く……?」

そして、クスクスと可笑しそうに笑い出した。

サキア「たしかに、そうかもー……ここにある植物は、人が少ないところに生えてるのも多いし。 僕と一緒で……きっと、たくさんの人を見てびっくりしてるね……」

愛おしそうに植物を見るサキアに、思わず笑みがこぼれた…-。

それから私達は、広い庭園内をゆっくり見て回った。

土の匂いのする林の中の遊歩道を通り抜けると、そこには一面の花畑が広がっていた。

○○「……綺麗……」

そう表現するしか思い当たらず、私はその景色の美しさに、ただため息をこぼした。

サキア「うん……。 よく花畑を……絨毯にたとえたりするけど……。 ……僕はベッドにして、あの上で寝たいなー……」

隣を見ると、にこにこと楽しそうに笑うサキアの横顔……

○○「サキアらしいね」

サキア「え…-」

○○「ううん、気持ち良さそう!」

私とサキアは二人並んで、しばらくの間、花畑を眺めていた。

お互いの手を繋いだまま、静かな時間が流れて行く。

すると…-。

サキア「……なんか……混んでるのに……うるさくないね……」

○○「え?」

そう言われて耳を澄ましてみると、確かに園内は人の多さの割に静かだった。

サキア「……林の中、歩いてる時もそうだった……なんでだろー……」

問うような彼の眼差しに、私は…-。

○○「たくさんの花や緑が綺麗だから、言葉が出てこなくなるんじゃないかな……」

サキア「そういえば……○○も、さっき……黙ったままだったよね」

○○「うん。あまりに花が綺麗だったから」

サキア「そっか……うん、そうかもしれないね」

サキアの口元が、優しく綻んで……

(あ……)

サキア「君も……今日はなんだか少し大人しい……? いつも、元気いっぱいなのに」

そう言って、彼はクスリとひとつ笑みをこぼす。

その柔らかな笑顔に、胸が小さく音を立てた。

○○「そ、そうかな…-」

胸の音が次第に大きくなって、思わずうつむいてしまうと……

ぎゅっと、私の手を握る力が強くなった。

サキア「そろそろ……熱帯植物用ドームのほう……行こう?」

○○「……うん」

胸の高鳴りが収まらないまま……私はサキアに手を引かれ、ドームへと歩き始めた…-。

……

花畑を背にして、しばらく進む。

熱帯植物用ドームは、最も人気の施設らしく、人波もそちらに向かってできていた。

(あ、見えてきた)

ドームに近づくほどに人の流れは増していて、入口付近は混雑がかなり激しい。

(すごい人の数……)

その時…-。

繋いでいた手が放されたかと思うと、その手で肩をぐっと引き寄せられる。

サキア「……大丈夫?」

人混みの中、すれ違う人とぶつかりそうになった私をサキアが庇ってくれた。

○○「うん……ありがとう」

サキア「……気を付けて……」

顔を上げると、私の顔を心配そうに見下ろすサキアの顔が、間近にあって……

(胸が……どきどきして)

気恥ずかしさに、私は顔をうつむかせてしまうのだった…-。

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