第5話 愛されたい花

アキトさんと偶然街で出会い、一緒に城へと戻ってきたものの……

その最中も、アキトさんは固い表情でほぼ押し黙っていた。

(何も……聞けなかったな)

―――――

店員『『夜光の花』……』

〇〇『え……?』

―――――

花屋の店員さんがどこか悲しげにつぶやいた、『夜光の花』という言葉…-。

(アキトさん達を見て、そう言ってた)

(夜光の花って、いったい……?)

アキト「……街は、いかがでしたか?」

急に話しかけられ、びくりと肩が跳ねた。

〇〇「ま、街ですよね……とても素敵でした!」

アキト「……」

鋭い眼差しが、うかがうように私を見つめている…-。

〇〇「あの……」

アキト「そうですか、それはよかったです」

小さく息を吐いた後、アキトさんは表情を柔らかくさせた。

(よかった……)

〇〇「はい。そういえば、お花屋さんで黄色や白の曼珠沙華を見たんです。 赤い花も私は好きですが、黄色や白もとても素敵なんですね」

アキト「ありがとうございます。貴方にそう言っていただけると、とても嬉しいです。 あれらは、私が園芸品種として推奨しました。赤い花は……不吉だと嫌われてしまうので」

悲しげに目を伏せるアキトさんを見ていると、花畑でのことを思い出す。

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アキト『綺麗、ですか……貴方はとても心が美しいのですね。 ある人はあれを見て、血のようだと言いました』

―――――

〇〇「だけど、やっぱり私は赤い花も素敵だと思います。 きっと、曼珠沙華を美しいと思う人はたくさんいますよ」

(あの花畑の景色は、とても綺麗だったから……それに)

―――――

〇〇『……可愛い』

店員『ありがとうございます! 最近では、園芸品種として赤い花以外にもいろいろと作られているんですよ』

―――――

(皆、曼珠沙華のことを愛してる)

〇〇「だから、アキトさんの思い……皆さんに愛される花にという思いは…-。 私はきっと、叶うと思います」

アキト「〇〇さん……」

アキトさんの顔が、ゆっくりと……これまでで初めて見るほどに、喜びに満ちた優しい笑顔になっていく。

〇〇「きっといます」

アキト「ええ……ええ、そうですね。それに……」

喜びに微笑んでいたかと思えば、不意にアキトさんの表情にまた陰りが生まれる。

〇〇「アキトさん……?」

心配になり、そっと手を重ねようとすると……

〇〇「!」

手首を力強く握られ、ぐっと彼に引き寄せられる。

(アキト……さん……?)

暗く悲しさをたたえた瞳が、私を見つめていて…-。

どくん、と心臓が高鳴る。

アキト「私は……私ときたら……。 曼珠沙華の民達もあんなに頑張ってくれているのに……愛される花になろうと必死に……。 それなのに私は……」

じっと私を見つめていた瞳が、またゆっくりと伏せられていく。

(アキトさん……)

〇〇「……アキトさん。教えてください」

その瞳の奥にあるものを知りたくて、私は口を開く。

〇〇「夜光の花というのは、何なのでしょうか?」

そう問うと、アキトさんの体が微かに震えたことがわかった…-。

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