第3話 事件の始まり

赤い曼珠沙華達が、不安そうに揺れている…-。

従者「アキト様、ご歓談中すみません」

私達に近づいてきたのは、アキトさんの城の従者の方だった。

従者「お取引先の大使の方が、緊急でお会いできないかとおっしゃっておりまして……」

アキト「……そう」

その報せに、アキトさんは短くため息を吐いた。

(アキトさん?)

その顔からはもう、あの柔らかな笑みが消えていた。

アキト「わかった、すぐに戻るよ」

従者の方に短く答えると、アキトさんはこちらを振り返る。

〇〇「あの、大丈夫ですか?」

アキトさんが何か言うよりも先に、問いかけた。

アキト「え……?」

すると、アキトさんは一瞬驚いたように目を見開いた。

〇〇「……アキトさんの表情が、なんだかその……辛そうだったので心配になって」

アキト「そうですか……ありがとうございます。貴方は本当に優しい。 けれど大丈夫です。ただ、貴方ともう少しゆっくり過ごしたくはありましたが……」

残念そうな顔を見せるアキトさんに、ちくりと胸が痛む。

〇〇「……私も、です。お仕事が終わって、アキトさんにお時間ができたら、また……」

アキト「ええ、そうですね。 また明日、貴方のお時間をください。城まで一緒に戻りましょう」

そっと背に添えられた彼の手が、ひどく冷たく感じた…-。

……

城まで戻ると、アキトさんは私が宿泊する部屋まで案内してくれた。

アキト「ゆっくり、過ごしてくださいね」

優しくそう言ってくれるアキトさんの顔色は、やはり少し青白い。

〇〇「あの、アキトさん……本当に大丈夫ですか? なんだか顔色も悪いみたいです」

心配になり、アキトさんをじっと見つめると、アキトさんは、ふっと困ったように笑みを浮かべた。

アキト「ええ、大丈夫です。ありがとうございます。 ……貴方は本当に優しくて……美しい人ですね。 なんだか……」

〇〇「……?」

何かを言いかけたアキトさんは、そこで一度口を閉じた。

不思議に思っていると、またすぐに口を開けて……

アキト「いえ、何でもありません。今日はゆっくりとお休みくださいね」

優しい声音は何も聞くなと拒絶しているようで、問うことができなくなる。

(何を言おうとしていたんだろう……?)

そのまま、アキトさんは私に背を向け仕事に向かってしまった。

夜の闇にまぎれ、動き出した者達の存在には気づかずに…-。

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