第3話 特訓!特訓!特訓!

次の日も、アインツさんと弟さんの練習は早朝から開始された。

アインツ「見ろ! オレの華麗な剣さばき!」

アインツさんがすごい勢いで剣を振り回し始める。

○○「すごい……!」

拍手をする私に、アインツさんがウインクしてみせる。

アインツ「だろ? ○○!」

振り回す彼の剣に、弟さんがトンと剣先をぶつけた。

○○「あ……」

アインツさんの手から、あっけなく剣が落ちる。

アインツの弟「……真面目にやる気はあるの?」

アインツ「オレはいつだって真面目だ!」

アインツの弟「のわりに上達しないけど?」

アインツ「わかってないなオマエは! オレはまだ本気を出していないだけだ! 本気のオレにかかれば、オマエなんか必殺技を出す前に終わるぞ!」

アインツの弟「……あの長い名前のやつか」

アインツ「そうだ! アインツミラクルスーパーナンバーワンアタックだ!」

アインツの弟「勢いよく真っ直ぐに剣を振り下ろすだけのやつね」

ため息交じりに弟さんが剣を構え直した。

(アインツさんって……)

(でも、まあ……)

冗談を言っているけれど、彼の額には汗が光っている。

(すごく一生懸命……私も何か手伝えないかな)

(そうだ!)

アインツさん達を残して、私は調理場へ向かった。

城の人に頼んで調理場をお借りして腕捲りをしてレモネードを作り始める。

……

○○「よし、これで完成かな?」

(アインツさん、喜んでくれるかな……)

アインツ「何を作ってるんだ? ○○」

○○「ア、アインツさんっ!」

いつの間に来ていたのか、アインツさんが、肩越しに私の手元を覗き込んだ。

○○「これ、レモネードです。運動後にちょうどいいと思って」

アインツ「飲んでいいか?」

○○「どうぞ」

ゴクゴクと喉を鳴らし、アインツさんがレモネードを飲む。

彼のたくましい喉仏に、つい目がいってしまって……

その仕草に、なぜだかちょっとドキドキする。

アインツ「これうまいな! 疲れが一気に吹き飛んだ!」

○○「よかった!」

うまいという言葉に、顔が綻ぶ。

アインツ「優しいな、オマエ。 ありがとな! ○○!」

アインツさんの大きな手が私の頭をクシャリと撫でる。

○○「っ……!」

アインツ「オマエと出会えてよかった!」

○○「おっ、大袈裟です……」

アインツ「そうか?」

アインツさんが笑い出すと、私の胸に温かさが広がっていく。

(何でだろう……)

(さっきから胸がなんだか、くすぐったい……)

何日か経つと、アインツさんのお友達も加わり、練習する声は賑やかになっていった。

(もうすぐ競技会か……)

最初の頃から一層、アインツさんの声も熱を帯びている。

そんな彼をつい目で追ってしまう。

○○「差し入れです」

彼らの練習に混ざれない分、私はレモネードを毎日差し入れた。

アインツの友達A「○○ちゃん、ありがとう!」

アインツの友達B「毎日楽しみだよ!」

○○「そういっていただくと、作るかいがあります」

アインツ「おい!」

後ろからアインツさんの長い腕が、私の肩を抱き寄せた。

アインツ「勘違いするなよ! ○○はオレの応援をしてくれてるんだ! オマエ達はそのおまけだ!」

アインツさんに、皆が不満そうに声を上げる。

(アインツさんの手が……熱い……)

力強い腕や、抱き寄せる大きな手をやけに意識してしまう。

アインツの友達「オマエが勝手に言ってるんだろ?」

アインツ「本当の事だ! そうだろ? ○○」

○○「あ……」

アインツさんが私の顔を覗き込む。

(今見られたら……顔が赤いのばれちゃう……)

顔を彼からそっと逸らすと、アインツさんは驚いたように目を見開いて、私から手を離した。

アインツ「わっ悪い! 女の肩を気安く抱いたらダメだよな!」

私の顔の赤さが移ったのか、アインツさんの顔も、真っ赤に染まっていた。

アインツの友達A「ほらみろー。困ってるじゃないかあ」

アインツ「う、うるさいっ!!」

彼の温もりが離れたことが、少し寂しく思えた…―。

そしてあっという間に競技会の日を迎えた…―。

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