第2話 競技会に向けて

城に着く頃、空は楓色に染まっていた。

アインツさんに連れられて、私は城の門を潜り抜けた。

アインツ「ここがオレの城だ!」

○○「素敵なお城ですね」

窓から差し込む夕日が、城の中まで黄昏色に染め上げている。

アインツの弟「兄さん、また何を騒いでいるんだい?」

アインツ「いい所に来たな! 紹介するぞ! オレを助けてくれた姫だ! こっちはオレの弟だ!」

○○「はっ、はじめまして……」

アインツの弟「ようこそ」

握手を求めて、弟さんが手を差し出してくれる。

その手を取ろうとしたその時…―

○○「アインツ……さん……?」

アインツさんが、私の代わりに弟さんの手を握った。

アインツ「○○の手を触るなんて、10年早いぞ!」

アインツの弟「握手をしようとしただけだよ」

アインツ「そうだ! 弟よ、オマエに頼みがある!」

弟さんの手を握ったまま、アインツさんが歩き出した。

アインツ「庭に行くぞ! 競技会に向けて練習しないといけないからな!」

アインツの弟「競技会って……出るつもりなの!?」

アインツ「当たり前だ! さあ行こうじゃないか!」

驚く弟さんに構わず、アインツさんがどんどん進んでいく。

○○「ちょ……ちょっと待ってください……!」

一人取り残されそうになり、私は慌てて駆け出した。

庭に出ると、アインツさんと弟さんは間をとり向き合った。

アインツの弟「兄さん、本気で競技会に出るつもり?」

アインツ「当然だ! ○○が望んでるからな!」

○○「そうですね」

アインツ「必ず優勝してみせるからな!」

任せろとでも言うように、アインツさんが歯を見せて笑った。

アインツの弟「馬鹿やってないで練習するよ」

ため息交じりに、弟さんが剣の腹で彼の頭を叩く。

アインツ「痛っ! アニキを剣で殴るな!」

アインツの弟「ほら、日が沈むよ」

二人のやり取りに、堪えきれずに笑ってしまう。

私の笑い声に、二人がこちらを振り向いた。

○○「あ、ごめんなさい……」

アインツ「楽しんでくれているならよかった!」

アインツさんが豪快に笑い返してくれた。

(清々しい人だな……)

輝く彼の笑顔に、再び頬をほころばせた。

アインツ「さあ来い! オレはいつでもっ……!」

○○「アインツさん……?」

突然、アインツさんが足を押さえてうずくまった。

アインツ「ひねった……」

○○「だ、大丈夫ですか!?」

アインツ
「これくらいなんともない! それに、ハンデがあるくらいがちょうどいいからな!」

その言葉に、弟さんが海よりも深いため息を吐く。

アインツの弟「準備運動くらいしなよ。もういい年のおっさんなんだから」

アインツ「何を言ってるんだ! オレは永遠の20歳だ!」

練習の邪魔にならないように、笑い声を抑える。

(楽しいな……)

藍色に変わり始めた空に、星が輝き始めていた。

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