第4話 兄弟の関係

しばらくして街から戻ってくると、城の中はいつの間にか慌ただしい様子を呈していた。

ヴァイリー「交流会の後に晩餐会を開くんだよ。その準備で忙しくて」

その言葉通り、あちこちで食器や花の確認が行われている。

そこで指示を出していたのは……

(あれ……もしかして)

ヴァイリー「ジェス、そっちは順調か?」

ヴァイリーさんが声をかけたのは、彼の弟のジェスさんだった。

ジェス「……問題ないよ。この程度のこと」

ヴァイリー「そうか。オマエが見てるなら安心だな」

素っ気ない態度のジェスさんにも、ヴァイリーさんは笑顔で頷く。

するとジェスさんが振り返り……ニヤリと、どこか意地の悪い笑みを浮かべた。

ジェス「あれ、やっぱり呪いを解いてよって、トロイメアの姫に頼んだんだ?」

ヴァイリー「……なんだと?」

ジェスさんの言葉を聞いて、先ほどまで笑顔だったヴァイリーさんが表情を険しくさせる。

そんな彼を小馬鹿にするように、ジェスさんは肩をすくめた。

ジェス「別にどうでもいいけど。兄さんが目覚めて王位は遠のいたし……しばらくおとなしくしてるよ。 のちのち僕が治めることになるとしても、国が発展しているに越したことはないからね」

〇〇「……!」

彼の言い草に、私はつい口を開いて…-。

〇〇「……ヴァイリーさんに、謝ってください」

ヴァイリー「〇〇! 構わないでいい」

ヴァイリーさんがぎこちなく私に笑いかける。

一方のジェスさんは、面白そうに私を見つめていた。

ジェス「怖い顔……お姫様なのに、いいの?」

〇〇「……っ」

ジェス「呪い持ちの兄さんと仲良くなんかして、トロイメアの姫と言っても所詮…-」

その瞬間……ヴァイリーさんが、怒りを滾らせるようにジェスさんを睨みつける。

ヴァイリー「オレのことは好きに言えばいい。けど…コイツのことを傷つけるのは許さねぇ」

ヴァイリーさんの低い声がその場に響くと、ジェスさんは顔を歪めて舌打ちをした。

ジェス「……面白くないな」

そう言い捨てて、ジェスさんはその場を立ち去る。

(……私のせいで、二人の関係が悪くなったりしないかな)

そう心配しつつも、私はヴァイリーさんに向き直った。

〇〇「ヴァイリーさん、かばってくれてありがとうございます……嬉しかったです」

小さくつけ加えると、彼も強張っていた表情を緩ませる。

ヴァイリー「おう……アイツのことは、あんまり気にすんなよ」

〇〇「……はい」

促され歩き出すと、ヴァイリーさんの手が遠慮がちに私の背に添えられた。

彼の手のひらの温かさが、心を切なく締めつけた…-。

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