第3話 明るい街で

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ヴァイリー『これまで、どうしても内にこもりがちだったけど。 国の奴らがもっと世界で活躍できるように動きたいって……そう思うようになったんだ』

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午後になり……執事さんに勧められ、私はヴァイリーさんとヴェリティアの街へと繰り出した。

以前に来た時よりも街は賑わいを見せていて、皆の顔つきも生き生きと明るい。

〇〇「皆、すごくいい顔してますね」

ヴァイリー「ああ……」

(あれ……ヴァイリーさん、なんだか元気がない?)

活気ある街の人達とは裏腹に、なぜか彼はばつが悪そうに黙り込んでいて……

尻尾もしゅんとうなだれてしまっていた。

〇〇「ヴァイリーさん?」

ヴァイリー「あ……いや、なんつーか。 ……オレから誘えなくて、悪かった」

〇〇「え……」

ヴァイリー「オマエのこと早く呼びたかったんだけど、なんかこう踏み切れなくてさ……。 自信がねえとか、そういうワケじゃなかったんだけど」

(ヴァイリーさん、それで……)

彼の浮かない表情の理由を聞いて、胸がくすぐられた。

〇〇「そんな……気にしないでください。それに今、こうして一緒に出かけられてますし」

ヴァイリー「……おう。改めて、ありがとな。オマエにまた会えて嬉しいよ」

ヴァイリーさんの素直な笑顔に、胸が甘い音を立てる。

〇〇「私も……会いたかったです」

素直に想いを伝えると、ヴァイリーさんは一瞬目を見開いて……

それから照れたように、街を見渡した。

ヴァイリー「っと、街の案内だったよな。ここらにいるのはだいたい職人で…-」

その時、ヴァイリーさんを見つけた一人の職人さんが声をかけてきた。

職人1「ヴァイリー王子! 視察に来てくださったんですね」

あっという間に、ヴァイリーさんの周りに大勢の職人さん達が集まってくる。

ヴァイリー「邪魔して悪い。調子はどうだ? 順調か?」

職人1「はい。初めてのことでどうなるかわかりませんが……必ず成功させますよ!」

ヴァイリー「そうか。オレも、商人や近隣国の貴族達に頑張って宣伝してくるからさ。 今日も、いくつか回ってきたところだったんだ。期待されてるって感じだよ」

(あ……さっきのは、その帰りだったんだ)

彼と職人さん達が、あれこれと交流会に向けての意見を交わしているのを見ていると、その雰囲気だけで、心が浮き立ってくる。

職人2「頑張ります! 最近獣化の呪いの話があったり、暗い話題が多かったりでしょう? だから、この交流会を成功させて明るい話題を作りたいんです!」

獣化の呪い……その言葉が出た瞬間、微かにヴァイリーさんが顔を曇らせた。

(……大丈夫かな)

獣化の呪いは、ヴァイリーさん達の王族が稀にかかってしまう恐ろしい呪い…-。

半人半獣ではなく、完全に獣の姿になってしまい……いずれは、元に戻れなくなってしまう。

(そうなったらもう、この国にはいられない……)

獣の姿になり苦しむヴァイリーさんを思うと、恐怖とやるせなさで心が震えた。

だけど彼は、すぐに頼もしい笑顔を浮かべて職人さん達に頷きかける。

ヴァイリー「そうだな。あと少しだ、頑張ってくれ」

声を揃えて返事をする職人さん達に別れを告げ……私達は視察を終えた。

ひと気のない場所まで来て、私はきゅっと彼の服を摘まむ。

〇〇「ヴァイリーさん……」

ヴァイリー「……大丈夫だ。アイツらだって、悪気があって言ったワケじゃない。むしろ…-。 呪われた王子がこんな事業をやってることの方が、問題かもしれねーな」

〇〇「そんな…-」

自分を卑下するような言い方に、私は…-。

〇〇「そんなことありません」

私がきっぱりとそう言うと、ヴァイリーさんは真面目な表情で頷く。

ヴァイリー「わかってる。まだその時じゃない。それに、たとえ駄目だったとしても……」

何かを言いかけて、ヴァイリーさんは首を振った。

ヴァイリー「……いや、なんでもねえ。 今は自分のことよりも、目の前のことをきっちりやり遂げたいんだ」

真摯な表情でそう語るヴァイリーさんに、私も彼を信じて頷き返す。

〇〇「……はい」

(ヴァイリーさんのことは、心配だけど)

その時、不意に『真実の愛』があれば呪いが解けると……以前聞いたことが頭をよぎった。

(私がヴァイリーさんに抱いている、この気持ちは……)

凛々しい彼の姿を見て、胸に浮かぶ気持ちに戸惑う。

けれど……

(もしかしたら、ヴァイリーさんを救えるかもしれない)

彼を見つめながら、私は熱くなる胸をそっと手で押さえたのだった…-。

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