第5話 兄の想い

窓から差し込む陽の光が、城の廊下に温もりを運ぶ…-。

(……いい天気)

(昨日はいろいろあったけど……)

―――――

ジーク『プリンセス、私はあなたに忠誠を誓った騎士。 出会ったあの日からずっと、私の心はあなただけのものです』

―――――

ジークさんの言葉を思い出し、頬がじわりと熱くなる。

火照った頬をあおいでいると、どこからか視線を感じた。

振り返るとそこには……

フレイヤ「……」

(フレイヤさん……!)

フレイヤさんが、鋭い瞳で私を見つめていた。

(そういえば……まだきちんと挨拶できていない)

〇〇「あの…-」

フレイヤ「私はあなたを認めない。だって、お兄様は私の理想の王子様なんですもの。 『乙女への誓い』は……フレイヤがお兄様からもらうんだから!」

〇〇「あっ……!」

フレイヤさんは私を一瞥すると、すぐに立ち去ってしまった。

まっすぐに兄を想う気持ちをぶつけられ、戸惑いに足が動かない。

(フレイヤさん、ジークさんのこと大好きなんだ……)

(ジークさんのことだから、きっと優しいお兄さんなんだろうな)

彼女の気持ちを思うと、胸がひどく軋むのだった…-。

……

その日の夜、私はジークさんから誘いを受けていた…-。

ジーク「プリンセス、寒くないですか?」

〇〇「はい、私なら大丈夫です」

月明かりの下で、ジークさんが私を優しく見つめる。

(いつ見ても、綺麗な瞳……)

紫のその瞳を見ると、ついフレイヤさんを思い出してしまう。

表情を曇らせる私に気づいたのか、ジークさんが眉尻を下げた。

ジーク「フレイヤがプリンセスに失礼なことをしていないでしょうか?」

〇〇「え……」

ジーク「改めてあなたに紹介しようとしたのですが、フレイヤの様子がおかしかったので……」

フレイヤさんとの会話を思い出し、私は……

〇〇「いえ、そんなことは……」

どう言っていいかわからず言葉に詰まると、ジークさんが穏やかな笑みを浮かべる。

ジーク「あなたは素直な方ですね」

その微笑みは、私の気持ちをすべてわかっているようで……

(やっぱり、隠せないよね)

私は観念して、先ほどのことをジークさんに話した…-。

ジーク「フレイヤがそんな失礼なことを……申し訳ありません」

ジークさんが心苦しそうにため息を吐く。

〇〇「いえ、そんな! ただ……。 ジークさんは、とてもいいお兄さんなんだなって思いました」

ジーク「え……?」

〇〇「フレイヤさんは、ジークさんのことをとても慕っているようだったので」

一瞬嬉しげに微笑んだ後、彼は困ったように首を振った。

ジーク「騎士として、女性を大切にと教えられてきました。私はただ、その教えに従っただけです。 きっといつか、妹達も自分の愛する人に守ってもらう時が来るでしょう」

突然、ジークさんの瞳が真剣な色を帯びる。

ジーク「私があなたという存在を見つけたように」

〇〇「ジークさん……」

揺るがないその視線に、胸が高鳴っていく。

こぼれ落ちそうなほどに瞬く月の光の中、私達は飽きることなく互いの瞳を見つめ合っていた…-。

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