第3話 愛の守護石

まるで世界中の宝石を集めてきたのかと錯覚するほどに、会場は無数の宝石の輝きに満たされていた…-。

隣を歩いていたジークさんが、ふと歩みを止める。

ジーク「こちらが、プリンセスに一番見ていただきたかったものです」

その宝石は、どこか神秘的な雰囲気をまとっている。

〇〇「綺麗な宝石ですね」

ジーク「ええ、特別な宝石ですから」

〇〇「……特別?」

ジーク「これは『乙女への誓い』と呼ばれる宝石で、メジスティアの王族が代々受け継いできた宝石です。 王となった者が、永遠の愛を誓う相手に捧げる宝石……愛の守護石とも言われています」

(愛の守護石……)

甘い響きが、耳に残る…-。

ジーク「とても大切なものなので、これは似た宝石を使ったレプリカなのですが……。 本物は、いずれ……」

言葉を切ったジークさんが、意味ありげな眼差しを私に向ける。

(え……)

見つめ合って数秒、自分の心臓の音ばかりが耳に響く。

ジーク「プリンセス、私は…-」

ジークさんが口を開いた、その時…-。

??「こちらにいらしてたんですね!」

不意に聞こえたかわいらしい声が、彼の言葉を遮った。

軽やかな足音が近づいて来たかと思うと、可憐な雰囲気の女性がジークさんの腕に絡みついた。

ジーク「フレイヤ……」

フレイヤ「ずっと探しておりました」

フレイヤと呼ばれた女性は、ジークさんを上目遣いで見つめている。

フレイヤ「ひどいわ、一緒に来たかったのに」

(ジークさんの知り合い?)

艶やかな長い髪を掻き上げていたずらっぽく微笑むさまは、同性の私から見ても魅力的に思えた。

(綺麗な人……私より少し年下かな?)

ジーク「今はトロイメアの姫君を案内しています。話なら後から聞きますから」

ジークさんが咎めるようにそう言うと、フレイヤさんは拗ねたように唇を尖らせた。

(すごく仲が良さそう……)

その瞬間、胸にチクリと鈍い痛みが走る。

(……あれ? 今、私……)

痛みを確かめるように、私は胸に手をあてた…-。

フレイヤ「わかりました。でも、約束よ? 後でたくさんお話ししましょうね」

フレイヤさんは名残惜しそうにジークさんの腕を離すと、私に軽く会釈をして、去っていった。

ジーク「すみません。お待たせしてしまいました」

申し訳なさそうに頭を下げた彼に、私は……

〇〇「いえ……大丈夫です」

ジーク「まさか、彼女がここに来ているとは……言うことを聞いてくれてよかったです」

困ったように眉尻を下げながらも、その声はとても優しい。

(フレイヤさんって、もしかして……)

なぜか胸が鈍く締めつけられて、言葉に詰まる。

ジーク「……プリンセス、どうされましたか?」

胸のわだかまりを悟られないように、私は無理やり笑顔を作った。

〇〇「いえ……何も」

するとジークさんは首を傾げ、小さく微笑む。

ジーク「プリンセスの微笑みはいつでも素敵ですが、今はいつもと少し違うかと……」

〇〇「……そうですか?」

(ジークさん、こんなにちょっとしたことでも気づいてくれてるんだな)

その優しさが、さらに私の胸をぎゅっと締めつける。

〇〇「心配かけてすみません。でも、本当に何もないので……」

いつものようにできているかわからないけれど、今できる精一杯の笑顔を私は浮かべた…-。

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